<理解の・・(中学数学編)><理解してから覚えることの大切さ(中学数学編)>------------------------------------------------------------- 世界にはインドのように算数と数学とを区別していない国は たくさんあります。しかし日本では算数と数学を区別している ので、今日は算数ではなく数学を題材にします。 前回の算数でもわかりやすいことや理解しやすいことが、長期 記憶として記憶に残りやすいことを書きました。これは数学でも 同じです。興味のある内容や理解できた内容は長期記憶として、 長く記憶に残ります。 そしてこれは新たな問題があたえられたときに、長期記憶から 認知心理学で言われるスキーマ(枠組み)として加工されて、 問題解決に使われることになります。 理解して記憶することは大切です。中学1年生に出てくるかん たんな計算でさえ、理解して記憶していないと、いつも間違いを おかします。そうならないために、機械的に処理する前に、しっ かり理解してから記憶するようにしましょう。 小学校の算数は正の数と0だけしか取り扱いません。ところが 中学の数学では負の数が入ってきます。ここでよくつまずくのは 負の数の引き算です。「(-2)をひく。」これは足し算になおす と「(+2)をたす。」ことと同じになります。 負の数をはじめて習う中学1年生には、「ひく」が反対の言葉の 「たす」になり、それと同時に数字の符号も反対になることが、 なかなか理解されないのです。 視覚的に数直線を書いて求めるときはできても、いざ数式だけに なると混乱してミスをしてしまいます。 この理解が不十分なまま、分配法則を使う文字式にはいると、 5a-(2b-c)=5a-2b+cのように、うまくカッコが はずせなくなってしまいます。これは正負の計算の理解と分配 法則の理解があいまいなままなのです。 さらにこの後、文字式から一次方程式へと学習は進んでいくと、 今度はこの二つの違いを、はっきり区別をしないまま学習を終えて しまう人が、必ずでてきます。 それは文字式では分母が払えないのに、方程式では分母が払える ようになるところで、理解があやふやになってしまうのです。 例えば文字式を簡単にする場合、A÷C+B÷Cは(A+B)÷Cと なるだけで、分母Cを払うことができません。 これが方程式A÷C=B÷Cになると両辺にCをかけて、分母を払って A=Cとできます。ここの理解が不十分なのです。 文字式と一次方程式が単独の問題として出題されれば、多くの 人はこの区別がつくのですが、学習を終えてしばらくたつと、 文字式と方程式の区別の理解があやふやになるのです。 そういう人は必ず分数の文字式の分母を方程式の時と同じように 払ってしまうのです。 日常の世界では大体理解すれば、間違わないことが多いものです。 たとえば犬と猫の区別をはっきりいえなくても、それらを見間違う 人はいないと思います。 しかし学習では、はっきり区別しなければなりません。そうしないと かならず間違ってしまうのです。 中学3年生になると素因数分解が出てきます。例えば90は素因数 分解して2×(3の2乗)×5のような素因数の積として表せるのです。 そしてこの90の約数は素因数分解を利用して求めることができます。 ここで90の約数は素因数1個からなる約数{2、3、5}、 素因数2個からなる約数{2×3、3×3、2×5、3×5}、 素因数3個からなる約数{2×(3の2乗)、2×3×5、 (3の2乗)×5}、素因数4個からなる約数{2×(3の2乗)×5} と約数1となり、合計12個の約数から成り立っていることがわかります。 教科書ではまず、素因数分解のしかたから入ります。それで機械的に 素因数分解はできるようです。 しかしそれから約数が求められることを正しく理解していないと、 小学校算数で習った約数の求め方でしか、求めることができなくなります。 次に中学数学では算数にはなかった証明問題が、新しく学習内容に 入ってきます。まず三角形の合同の証明です。一般の三角形の合同 条件は、「(1)3辺がそれぞれ等しい。(2)2辺とその間の角が それぞれ等しい。(3)一辺とその両端の角がそれぞれ等しい。」の 3つです。 2つの三角形の合同を示すには(1)~(3)のどれかの合同条件が 成り立てばよいのです。これは三段論法を用いて示すことになります。 例えば合同条件(1)を使うとすると、仮定ならば(1)、(1)ならば 合同、したがって仮定ならば合同がいえるのです。 ところが証明を始めて習う中学生の中には(1)を示すだけで、 なぜ合同がいえるのかわからないもの、反対に結論から仮定を導こうと するものや、証明の途中に結論を使ってしまうものがでてきます。 これは「AならばB」と「BならばC」から「AならばC」を導く三段論法が、 理解されていないのです。 また三段論法が理解されていても、仮定から(1)~(3)の合同条件の どれを示せばよいのか、問題から判断がつかない人がたくさんいます。 一般に数学では方程式などの文章問題を解くには、与えられた条件と 隠された条件の両方を使って答えを導くのが定石です。これは証明でも 変わりません。 まず与えられた条件はそのまま使えます。つぎに問題文に直接あたえら れていない隠された条件は、図を描くことや補助線を引くことで、それを 確かな条件に変えてしまいます。 つまり問題に与えられた明らかな条件と、隠された条件から導き出された 確かな条件から結論を導くのです。 ここで理解しておかなければならないことは、問題を解いたり結論を 導くには、隠された条件からいかに確かな条件を導くかということ なのです。 このことが理解されていないと、問題を解くことも証明することも、 できなくなってしまいます。 他に中学数学では2次方程式の解の公式、円周角の定理や三平方の 定理などが出てきます。これらの公式や定理は比較的覚えやすいの ではないでしょうか。 理解なくして使ってはいけないとは言いません。しかし必ず後で、 導き方まで理解するようにしておきましょう。 これらの理解は必ず長期記憶されるときに、認知心理学でいわれる ところのスキーマ(枠組み)となり、新たな問題解決のときに想起され、 有効に活用されることになります。 スキーマが複雑にからみあって、脳に長期記憶されればされるほど、 新たな問題に対処するときに、たんにそれを解決するだけでなく、 その処理速度もあがるのです。 ここに理解してから記憶することの大切さがあるのです。機械的な 処理だけでなく、必ず理解して覚えるように心がけてください。そう すれば上達がはやまります。 つづく ------------------------------------------------------------------- 今回は「理解してから覚えることの大切さ(中学数学編)」を 書きました。こういう習慣をつけていけば高校数学になっても、 問題解決のためのスキーマを数多く蓄えていくことができます。 しかも何より一度覚えたことはなかなか忘れなくなるのです。 理解してから覚えることの大切さ(高校数学編)に移動する。 ジャンル別一覧
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